1 退職勧奨とは?
退職勧奨とは、会社から従業員に退職を促して、従業員の自発的意思に基づき退職をしてもらうための活動をいいます。
会社が従業員を退職させようとする場合の手段としては、解雇、退職勧奨、希望退職等が挙げられますが、解雇は法律上限定された場合にしか認められないこと、また、希望退職は必ずしも想定している従業員からの退職申入れがなされるとは限らないことから、実際には退職勧奨の手法が用いられることが多く見られます(ただし、退職勧奨によっても従業員がこれに応じない場合には退職させることができない点には留意してください。)。
2 退職勧奨が違法とならないためには?
退職勧奨は、会社が雇用契約を一方的に終了させる解雇とは異なり、あくまでも従業員に退職するよう働きかけるのみの活動であり、基本的には、これを行うことで違法となるわけではありません(例えば、性別を理由とする退職勧奨は、男女雇用機会均等法4条に反するため違法です。)。
ただし、退職勧奨が社会的に不相当な態様で行われたと評価されるような場合には、不法行為が成立し、退職勧奨を受けた従業員から慰謝料請求がなされる可能性があります。
当該退職勧奨が社会的に不相当な態様で行われたか否かの判断に際しては、退職勧奨の際の使用者の言動、退職勧奨が行われた時間・場所・人数・頻度、退職勧奨を受けた従業員側の反応、退職勧奨に従わなかった場合の不利益の有無等が考慮されます。
例えば、従業員の名誉を傷付けるような言動や、脅迫的・威圧的な言動をしたり、従業員が従わない意思を表示しているにもかかわらず執拗に退職勧奨を繰り返したりした場合には、退職勧奨が社会的に不相当な態様で行われたと評価され、不法行為が成立する可能性があります。
退職勧奨を行う場合には、以上の点に注意して、社会的に不相当な態様で行われたと評価されないように進めていく必要があります。